あなたは「投資信託を注文したのに、なかなか約定されない」と感じたことはありませんか?結論、投資信託の約定日は株式とは異なる独自の仕組みがあり、ファンドの種類によって約定までの日数が変わります。この記事を読むことで投資信託の約定日の仕組みと最適な注文タイミングがわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
1.投資信託の約定日が遅い理由とは

投資信託特有の「ブラインド方式」による仕組み
投資信託の約定日が遅く感じる最大の理由は、「ブラインド方式」という独自の取引方法を採用しているためです。
ブラインド方式とは、投資家が注文を出す時点では約定される基準価額がわからない状態で取引する仕組みのことを指します。
この方式が採用されている理由は、投資家間の公平性を保つためです。
もし前日の基準価額で売買できてしまうと、当日の実際の時価評価額よりも安く購入できたり、高く売却できたりする不公平が生じてしまいます。
例えば、当日の基準価額が10,050円で前日が10,000円だった場合、前日価格で買えると50円も得をすることになり、既存の投資家に不利益が生じます。
ブラインド方式により、すべての投資家が同じ条件で取引できる仕組みが実現されているのです。
国内資産と海外資産で異なる約定日のタイミング
投資信託の約定日は、投資対象が国内資産か海外資産かによって大きく異なります。
国内資産のみを投資対象とするファンドの場合、一般的に申込日当日が約定日となります。
一方、海外資産を含むファンドでは、申込日の翌営業日以降が約定日となることがほとんどです。
これは海外市場との時差や、基準価額の決定プロセスが影響しているためです。
例えば、米国株式に投資するファンドの場合、日本時間の営業時間内に注文を出しても、米国市場はまだ開いていないか、これから取引が始まる時間帯です。
そのため、海外市場の取引結果を反映した基準価額が確定するまで、どうしても時間がかかるのです。
時差と海外市場の休場日が影響する理由
投資信託の約定日が予想以上に遅くなる原因として、時差と海外市場の休場日があります。
海外資産を含む投資信託では、投資対象となる国や地域の市場営業時間が日本とは大きく異なります。
特に米国市場は日本時間の夜間から早朝にかけて取引されるため、全ての市場での取引結果を集計し終えるのが日本時間の深夜または翌朝になることがあります。
さらに、海外市場の祝日や休場日が重なると、約定までに1週間以上かかることもあります。
例えば、月曜日の夕方に米国株式ファンドを注文した場合、締切時間を過ぎていれば申込日は火曜日となり、米国の祝日が水曜日だった場合、約定日は木曜日以降にずれ込むことになります。
このように、複数の市場の営業カレンダーが複雑に影響し合うことで、約定日が遅くなるのです。
基準価額の計算・公表プロセスに必要な時間
投資信託の基準価額は1日1回しか公表されず、その計算と公表には一定の時間が必要です。
基準価額は、ファンドが保有している資産の時価総額から信託報酬などの費用を差し引き、投資信託全体の口数で割って算出されます。
運用会社は各市場の取引終了後にこの計算作業を行い、営業日の20時頃までに基準価額を算出します。
証券会社などの販売会社では、21時30分頃から順次その日の基準価額を更新・公表していきます。
国内外の様々な銘柄を投資対象としているファンドの場合、全ての市場データを集計して正確な時価評価を行うのに時間がかかります。
この計算・公表プロセスの時間的制約が、約定日のタイミングに影響を与えている重要な要因なのです。
2.申込日・約定日・受渡日の違いを理解する

申込日とは何か|注文締切時間の重要性
申込日とは、投資信託の売買注文を証券会社に出した日のことを指します。
ただし、注文を出した時刻によって申込日が変わる点に注意が必要です。
投資信託には「カットオフタイム」と呼ばれる注文の締切時間が設定されており、一般的には営業日の15時までとなっています。
15時までに注文を出せばその日が申込日、15時を過ぎると翌営業日が申込日となります。
例えば、金曜日の15時30分に注文を出した場合、土日は営業日ではないため、申込日は翌週の月曜日になります。
このように、締切時間を1分でも過ぎると申込日が1営業日ずれるため、急いで購入したい場合は締切時間を必ず確認しましょう。
なお、カットオフタイムは証券会社やファンドごとに異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
約定日とは何か|取引成立と基準価額の関係
約定日とは、投資信託の売買取引が正式に成立した日のことです。
投資信託は株式のようにリアルタイムで取引が成立するわけではなく、注文後に基準価額が決定され、その後に取引が確定します。
約定日の基準価額が、実際の購入単価または売却単価となるため、投資信託取引において最も重要な日付といえます。
国内資産のみを投資対象とするファンドでは、申込日と約定日が同じ日になることがほとんどです。
一方、海外資産を含むファンドでは、申込日の翌営業日以降が約定日となります。
これは、海外市場の取引結果を反映した基準価額を確定させる必要があるためです。
つまり、注文時に画面に表示されている基準価額は直近のものであり、実際の約定価額とは異なることを理解しておく必要があります。
受渡日とは何か|実際に資金が動くタイミング
受渡日とは、投資信託の売買が決済される日、つまり実際に現金が動く日のことを指します。
ただし、投資信託の購入時には、申込みの時点で口座に資金がないと注文が出せない仕組みになっています。
受渡日までに資金を準備すればよいわけではなく、注文時点で購入代金が拘束される点に注意しましょう。
投資信託の受渡日は、一般的に約定日の2〜5営業日後ですが、ファンドによって異なります。
特に売却時には、受渡日にならないと実際に現金が入金されないため、急いで現金が必要な場合は注意が必要です。
約定日から受渡日までに土日や祝日が挟まれると、現金化はさらに遅くなります。
ゴールデンウィークや年末年始、海外資産に投資しているものであればクリスマス時期など、約定日から1〜2週間後になる場合もあり得るのです。
3つの日付が異なることで生じる注意点
申込日・約定日・受渡日という3つの日付のタイムラグによって、想定外の事態が発生することがあります。
まず、NISA口座を利用している場合、非課税投資枠の利用は受渡日を基準として計算されます。
そのため、年末ギリギリに投資信託を購入した場合、受渡日が年明けになると翌年分の非課税枠が使われてしまうことがあります。
また、投資信託を売却して得た利益にかかる所得税も、受渡日が基準となります。
申込日や約定日が年内でも、受渡日が翌年になると翌年分の所得として計算されるため、確定申告が必要な方は注意が必要です。
さらに、約定日が予想より遅れると、基準価額が大きく変動してしまうリスクもあります。
これらのリスクを避けるためには、余裕を持った売買計画を立てることが重要です。
3.ファンドごとに異なる約定日の確認方法

交付目論見書で約定日を確認する手順
投資信託の約定日を正確に知るには、交付目論見書を確認するのが最も確実です。
交付目論見書とは、ファンドを購入する際に必要な重要事項が説明された公式の書類のことを指します。
交付目論見書には「手続・手数料等」という項目があり、その中の「購入価額」の欄に約定日が明記されています。
一般的には「購入申込受付日の翌営業日の基準価額」といった形で記載されていることが多いです。
交付目論見書は、証券会社のウェブサイトや各ファンドの個別ページからPDF形式でダウンロードできます。
また、申込日・受渡日についても同じページに記載されているため、取引全体のスケジュールを把握できます。
初めて購入するファンドの場合は、必ず交付目論見書で約定日を確認してから注文することをおすすめします。
国内運用ファンドと海外運用ファンドの違い
投資信託の約定日は、運用対象が国内か海外かで大きく異なるため、購入前に必ず確認しましょう。
国内運用ファンド(国内株式や国内債券など)の場合、一般的に注文日当日が約定日となります。
営業日の15時までに注文を出せば、その日の取引終了後に算出される基準価額で約定します。
一方、海外運用ファンド(米国株式、新興国株式など)の場合は、注文日の翌営業日以降が約定日となることがほとんどです。
これは、海外市場の取引結果を反映した基準価額が翌日にならないと確定しないためです。
さらに、複数の国や地域に分散投資しているグローバルファンドの場合、約定日が2営業日後になることもあります。
投資対象の地域が多いほど、約定までに時間がかかる傾向があると覚えておきましょう。
証券会社の注文画面で確認できる情報
各証券会社の投資信託注文画面では、約定日に関する重要な情報を確認できます。
多くの証券会社では、ファンドの個別ページに「注文情報」や「購入情報」といったセクションがあります。
ここには、注文締切時間(カットオフタイム)、約定日、受渡日などが具体的な営業日ベースで表示されています。
例えば「営業日15:30までのご注文で翌営業日に約定します」といった形で記載されています。
また、注文確認画面では、その注文の予定約定日が表示されるため、注文を確定する前に必ず確認しましょう。
SBI証券や楽天証券などの主要ネット証券では、ファンドごとに約定日の目安が明示されているので、初心者でも安心です。
注文前に必ずこれらの情報を確認する習慣をつけることで、想定外のタイミングでの約定を避けることができます。
約定価額が実際に確認できるタイミング
実際の約定価額(約定単価)は、約定日の翌日にならないと確認できない点に注意が必要です。
約定日の基準価額は、その日の取引終了後に計算され、運用会社によって20時頃までに算出されます。
証券会社では21時30分頃から順次基準価額を更新・公表するため、約定日の夜遅くか翌朝に初めて約定価額がわかるのです。
約定価額の確認方法は、証券会社の「注文・約定照会」や「取引履歴」のページから「約定明細」を見ることで確認できます。
注文時に表示されている基準価額は前日以前のものであり、実際の約定価額とは必ず異なることを理解しておきましょう。
特に海外資産を含むファンドでは、為替変動や海外市場の急変動により、予想と大きく異なる価額で約定する可能性があります。
約定後は必ず約定価額を確認し、自分の投資記録として保存することをおすすめします。
4.約定日を意識した注文タイミングの最適化

締切時間前に注文を出すメリット
投資信託の注文は、カットオフタイム(締切時間)前に出すことで多くのメリットがあります。
最大のメリットは、申込日が確実にその日となり、約定日のスケジュールが明確になることです。
締切時間ギリギリや締切後に注文を出すと、申込日が翌営業日にずれ込み、約定日も1営業日以上遅れてしまいます。
特に国内資産のファンドの場合、15時までに注文すればその日の市場の動きを反映した基準価額で約定できます。
午後の市場動向を見てから判断したい気持ちもありますが、締切時間前に注文することで確実性が高まるのです。
また、システムトラブルや回線の混雑なども考慮すると、締切時間の30分〜1時間前には注文を完了させるのが理想的です。
余裕を持った注文により、想定通りのタイミングで約定できる確率が高まります。
海外資産を含むファンドでの注意点
海外資産を含む投資信託を購入する際は、国内資産ファンド以上に注意が必要です。
海外市場の休場日(祝日など)は、購入や売却の申込不可日となるため、約定日が大幅に遅れる可能性があります。
例えば、米国の感謝祭やクリスマス、中国の春節など、各国独自の祝日が約定日に影響を与えるのです。
月曜日に注文を出したつもりでも、海外市場が休場日だった場合、約定日が1週間以上先になることもあります。
また、為替変動のリスクも考慮する必要があります。
注文してから約定日までに為替レートが大きく変動すると、予想と異なる基準価額で約定する可能性が高まります。
海外資産ファンドを購入する際は、投資対象国の市場カレンダーを事前に確認し、余裕を持ったスケジュールで注文することが重要です。
年末年始やゴールデンウィーク時の対策
年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇期間は、約定日が大幅に遅れる可能性が高いため、特に注意が必要です。
日本の証券取引所が休場する日数が多いだけでなく、海外市場も各国の祝日で休場となることがあります。
例えば、12月末に投資信託を購入した場合、年末年始の休場日が挟まるため、約定日が翌年になることがほとんどです。
さらに、受渡日まで考えると、実際に資金が動くのは1月中旬になることもあります。
年内にNISA枠を使い切りたい場合や、年内の所得として利益確定したい場合は、12月上旬には売買を完了させる必要があります。
ゴールデンウィーク前後も同様で、海外市場の祝日と重なると約定まで2週間近くかかることもあります。
長期休暇の前後は早めに行動し、余裕を持ったスケジュールで投資計画を立てることが成功のポイントです。
NISA口座利用時に気をつけるべきポイント
NISA口座で投資信託を購入する際は、非課税投資枠の利用タイミングに特に注意が必要です。
NISA口座の非課税投資枠は、申込日でも約定日でもなく、受渡日を基準に利用される仕組みになっています。
例えば、12月28日に投資信託を購入しても、受渡日が翌年1月になると、翌年分の非課税枠が使われてしまいます。
年間の非課税投資枠を最大限活用したい場合は、12月上旬までに購入を完了させることをおすすめします。
また、つみたてNISAやNISAの成長投資枠で積立投資をしている場合、積立日の設定も重要です。
月末に積立日を設定していると、約定日や受渡日が翌月にずれ込む可能性があるため、月の中旬に設定するのが安全です。
さらに、NISA口座で購入した投資信託を売却する際も、受渡日が翌年になると税制上の扱いが変わることがあります。
NISA口座を最大限活用するには、申込日・約定日・受渡日の3つの日付を正確に把握し、余裕を持った投資計画を立てることが不可欠です。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 投資信託の約定日が遅いのは「ブラインド方式」による投資家の公平性確保のため
- 国内資産ファンドは申込日当日、海外資産ファンンドは翌営業日以降が約定日となる
- 時差と海外市場の休場日により約定日が1週間以上遅れることもある
- 申込日・約定日・受渡日の3つの日付がそれぞれ異なることを理解する必要がある
- 約定日を確認するには交付目論見書や証券会社の注文画面をチェックする
- 実際の約定価額は約定日の翌日にならないと確認できない
- カットオフタイム前に注文を出すことで約定日のスケジュールが明確になる
- 年末年始やゴールデンウィークは約定日が大幅に遅れる可能性が高い
- NISA口座では受渡日基準で非課税枠が利用されるため年末の購入は要注意
- 余裕を持った投資計画と早めの行動が投資信託取引成功のカギとなる
投資信託の約定日の仕組みを理解することで、想定外のタイミングでの約定を避け、計画的な資産形成ができるようになります。今日から余裕を持った注文スケジュールを心がけて、賢い投資信託運用を実践していきましょう。
関連サイト
一般社団法人投資信託協会