あなたは「ストラディバリウスって日本人も持っているの?」と思ったことはありませんか?結論、日本にも約40挺のストラディバリウスがあり、個人所有と貸与の両方で演奏家たちに使われています。この記事を読むことで、日本のストラディバリウス所有者や価格、名器の秘密がわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。
1.ストラディバリウス所有者【日本人編】

日本音楽財団から貸与されている演奏家たち
日本でストラディバリウスを演奏する多くの演奏家は、日本音楽財団からの貸与を受けています。
日本音楽財団は公益財団法人として、所有する楽器を世界レベルの演奏家に貸与する事業を展開しています。
この財団は1994年にアメリカのコーコラン美術館から伝説のパガニーニ・カルテット(4挺セット)を購入するなど、積極的にストラディバリウスを収集してきました。
現在、財団が所有するストラディバリウスは15挺以上に及び、これらは常に世界トップクラスの演奏家に貸し出されています。
貸与される演奏家は、国際コンクールの優勝者や世界的に活躍するソリストたちです。
例えば、エリザベート王妃国際音楽コンクールのヴァイオリン部門優勝者には、次期コンクールまで「ハギンス」という名器が貸与される仕組みになっています。
この貸与システムにより、日本の演奏家だけでなく世界中の才能ある音楽家が、最高の楽器で演奏活動を続けることができるのです。
個人所有している日本人演奏家
日本人でストラディバリウスを個人所有している演奏家は非常に珍しい存在です。
ストラディバリウスは億単位の価格であり、購入には莫大な資金が必要となるため、個人で購入できる演奏家は限られています。
個人所有の場合、楽器は永遠に自分のものとなりますが、年間200~300万円規模の保険料やメンテナンス費用が必要です。
温度や湿度の管理、定期的な修理、専用ケースの準備など、維持管理だけでも相当な負担がかかります。
しかし、貸与と違って演奏期間に制限がなく、自分の音楽表現に合わせて楽器を育てていくことができるという大きなメリットがあります。
日本では、高嶋ちさ子さんや千住真理子さんなどが個人所有の代表例として知られています。
千住真理子さんは「個人で持っているのは珍しい」と自ら語っており、日本の演奏家の中でも特別な存在であることがわかります。
高嶋ちさ子が所有するストラディバリウス「ルーシー」
高嶋ちさ子さんが所有するストラディバリウスは、1736年製の「ルーシー(Roussy)」です。
この楽器はストラディバリが93歳で亡くなる1年前に製作された晩年の最高傑作のひとつとされています。
高嶋さんは最初にルーシーに出会った時、「本物って綺麗だな」と思いながらも、自分が所有するなど考えもしなかったと語っています。
その後、自分が愛用していた「ロジェリ」というバイオリンで満足していた時期に、ルーシーと再会する機会が訪れました。
初めて試奏した時は「あれ?こんなもん?」という印象で、自分のロジェリの方が良いとさえ思ったそうです。
しかし、周囲からストラディバリウスの可能性を聞くうちに、「今度離れたら、もう一生めぐりあえないんじゃないか」と考えるようになりました。
そして「清水の舞台から飛び降りる思い」で購入を決意し、現在では人生の相棒として大切に演奏し続けています。
購入価格は約2億円と言われており、高嶋さん自身もテレビ番組で「億ですよ!億!」と語っています。
千住真理子が所有するストラディバリウス「デュランティ」
千住真理子さんが所有するストラディバリウスは「デュランティ」という名器です。
購入価格は2~3億円とされていますが、正確な金額は公表されていません。
千住さんは「個人で持っているのは珍しい」と自ら発言しており、日本の演奏家の中でも特別な立場にあることを示しています。
デュランティは音色の美しさと表現力の豊かさで知られ、千住さんの演奏活動を支える重要なパートナーとなっています。
ストラディバリウスを個人所有することで、楽器との一体感を深め、自分だけの音色を追求できる環境を手に入れたのです。
前澤友作氏が所有する「ハンマー」と天才少女HIMARI
実業家の前澤友作さんは、2006年に約4億円で落札された「ハンマー」というストラディバリウスを所有しています。
前澤さんがストラディバリウスを所有することになったきっかけは、日本ヴァイオリンの中澤社長からの声かけでした。
「若く、才能があるバイオリニストや子供たちのために所有してほしい」という依頼を受け、社会貢献の一環として購入を決断しました。
そして2023年8月、12歳の天才バイオリニストHIMARIさん(吉村妃鞠)にこの楽器を貸与しました。
前澤さんはHIMARIさんの才能に惚れ込み、若い世代の音楽家を支援する形でストラディバリウスを活用しています。
この事例は、ストラディバリウスが単なる骨董品ではなく、次世代の音楽家を育てるツールとして機能していることを示しています。
2.ストラディバリウスとは何か【基礎知識】

アントニオ・ストラディバリの生涯と製作活動
アントニオ・ストラディバリは1644年頃にイタリアで生まれ、1737年に93歳で亡くなるまで弦楽器製作に人生を捧げた伝説的な職人です。
彼はまず、名工ニコロ・アマティの工房で弟子として楽器製作の技術を学びました。
その後、1630年頃に息子2人(フランチェスコとオモボノ)とともに独自の工房を開き、家族で楽器製作を始めました。
18世紀の法令では、弦楽器にはラテン語で製作者のラベルを貼ることが義務付けられていました。
アントニオの楽器には「Antonius Stradivarius Cremonensis(クレモナのアントニオ・ストラディバリ作)」というラベルが貼られていました。
このラベルから、彼らが製作した楽器は「ストラディバリウス」または略して「ストラド」と呼ばれるようになったのです。
ストラディバリ父子が生涯で製作した楽器は約1,100~1,300挺とされ、バイオリン、ヴィオラ、チェロ、マンドリン、ギターなど多岐にわたります。
現存する約600挺のストラディバリウス
ストラディバリ父子が製作した楽器のうち、現存するのは約600挺です。
内訳としては、バイオリンが約520挺と圧倒的に多く、次いでチェロが63挺、ヴィオラが8挺となっています。
マンドリンは2挺、ギターやハープは極めて少数しか残されていません。
これらの楽器は世界中に散らばっており、日本には約40挺が存在すると言われています。
現存するストラディバリウスの多くは、アントニオの故郷であるイタリアのクレモナを中心に、博物館や文化施設に所蔵されています。
また、個人コレクターや演奏家、財団などが所有しているものもあります。
現存する楽器の多くは19世紀にフランスの楽器製作者によって改造を受けており、ネックの傾斜や指板の長さなどが変更されています。
これは、より大きな会場での演奏に適した華やかな音を出すための改良でした。
世界三大バイオリンとストラディバリウスの位置づけ
世界三大バイオリンとは、アマティ、ストラディバリウス、ガルネリの3つを指します。
アマティは優しくまろやかな音色が特徴で、ストラディバリウスの師匠であるニコロ・アマティの楽器が特に有名です。
アマティがいなければストラディバリウスは生まれなかったと言われるほど、バイオリン製作史において重要な存在です。
ストラディバリウスは大きな会場での演奏を想定して作られており、力強く深みのある音が特徴です。
特に高音の美しさが際立っており、バイオリンの最高峰として君臨しています。
ガルネリ(特にガルネリ・デル・ジェス)は、力強く個性的な音色で知られ、情熱的な演奏に向いています。
この3つの中でも、ストラディバリウスは最も高値で取引され、楽器史上最も有名な存在となっています。
それぞれの楽器に付けられた愛称の意味
ストラディバリウスのような歴史的名器には、それぞれに愛称が付けられています。
愛称は主に、過去の所有者の名前に由来することが多いのが特徴です。
例えば、高嶋ちさ子さんの「ルーシー」は、スイスの名家であるルーシー家が所有していたことから名付けられました。
「ハギンス」は、イギリスの天文学者ウィリアム・ハギンス卿が生涯所有していたことに由来します。
「パガニーニ・カルテット」は、伝説的なヴァイオリニストニコロ・パガニーニが所有していた4挺セットであることから名付けられました。
また、「ドラゴネッティ」は、イタリアのコントラバス奏者ドメニコ・ドラゴネッティが大切に所有していたことから名前が付いています。
愛称が付いていることは、その楽器が歴史的価値を持つ証であり、名器の中の名器であることを示しています。
これらの愛称は、楽器が単なる道具ではなく、歴史と文化を背負った芸術作品であることを物語っているのです。
3.ストラディバリウスの価格と価値

オークション史上最高額の「レディ・ブラント」
オークションで落札されたストラディバリウスの最高額は、2011年6月21日に記録されました。
1721年製の「レディ・ブラント」が、オンラインオークションのTarisioで約15.9億円(1589万4000ドル)で落札されたのです。
この楽器は東日本大震災のチャリティのために出品され、ほぼ未使用に近い完璧な保存状態だったことが高値の理由でした。
「メシア」に次ぐコンディションの良さと評価され、それまでのヴァイオリンとしての落札価格記録を大きく更新しました。
それ以前の記録は、2006年に約4億円で落札された「ハンマー」が保持していました。
ただし、オークションで最高額をつけた楽器が最も高価とは限りません。
有名で高額な楽器はオークションにかけられず、直接取引されることが多いためです。
実際、2025年2月にオークションに出品予定の「ヨアヒム・マ」は、推定落札価格が約27億円とされており、新記録樹立が期待されています。
日本人が購入したストラディバリウスの価格帯
日本人が購入したストラディバリウスの価格は、2億円から数億円規模となっています。
高嶋ちさ子さんの「ルーシー」は約2億円で購入されたと言われています。
千住真理子さんの「デュランティ」は2~3億円とされていますが、正確な金額は非公表です。
実業家の前澤友作さんが所有する「ハンマー」は、2006年のオークションで約4億円で落札されました。
これらの価格は、楽器の製作年代、保存状態、歴史的背景によって大きく変動します。
特に1715年頃に製作されたものは最高の評価を受け、価格も高額になる傾向があります。
一般的に、音大生が使用するプロ仕様のバイオリンでも1000万円程度かかることを考えると、ストラディバリウスの価格は桁違いです。
バイオリンのレベルは8段階に分類され、ストラディバリウスは最上級のレベル8「超越者」(8000万円以上)に位置づけられます。
なぜこれほど高額なのか【音色の秘密】
ストラディバリウスが高額な理由は、一言で言えば「音の響き」が他の楽器と比較にならないほど優れているからです。
元NHK交響楽団のコンサートマスター徳永二男氏は「演奏家が求める感情表現に必要な音色の深さと幅を持っているのがストラディバリウス」と語っています。
現存する約600挺という希少性も、需要に対して供給が追いつかない状況を生み、価格を押し上げています。
また、ストラディバリウスは美術品としての側面も持っており、演奏されずに保存されているものほど美術品としての価値が高まります。
一方で、楽器としては使い込まれたほうが良い音色となるため、この2つの価値観が複雑に絡み合っています。
300年以上のエイジング(経年変化)により、木材が最適な状態に熟成されていることも音色の秘密です。
偉大なヴァイオリニストたちに弾かれ続けてきた歴史が、楽器自体を「育てて」きたのです。
さらに、ストラディバリウスは単なる楽器ではなく、歴史と文化を背負った芸術作品として扱われるため、その価値は年々上昇し続けています。
小氷河期の木材とエイジング効果
ストラディバリウスの音色の秘密を語る上で欠かせないのが、小氷河期の木材です。
17世紀は地球規模の小氷河期であり、この時代の木は非常に真っ直ぐで目が詰まっていたという特徴があります。
ストラディバリはこの最高品質の木材を使用することができ、材質選びの面で非常に運が良かったのです。
使用されたスプルース材は、切られてから330年目ぐらいが最高の強度になると言われています。
つまり、現存するストラディバリウスは、木材として最高のコンディションに達しているということです。
次に重要なのがエイジング(経年変化)効果です。
300年という歳月の中で、単に置かれていたのではなく、偉大なヴァイオリニストによって弾かれ続けてきたことが重要です。
演奏され続けることで楽器は振動し、木材の内部構造が最適化されていきます。
日本ヴァイオリンの中澤創太氏は「材質、エイジング、そして天才ストラディバリの存在、すべての偶然が重なって今のストラディバリウスが完成した。つまり、奇跡なのです」と語っています。
現代の技術でCTスキャンして寸法をコピーしても、この奇跡の組み合わせは再現できないのです。
4.日本音楽財団の役割と貸与システム

日本音楽財団が所有するストラディバリウス
日本音楽財団は、世界でも有数のストラディバリウスコレクションを所有する公益財団法人です。
財団が所有するストラディバリウスはヴァイオリン15挺以上に及び、他にもヴィオラやチェロも保有しています。
最も有名なのは、1994年にアメリカ・ワシントンD.C.のコーコラン美術館から購入した「パガニーニ・カルテット」です。
このカルテットは、伝説のヴァイオリニストニコロ・パガニーニが所有していた4挺セット(ヴァイオリン2挺、ヴィオラ1挺、チェロ1挺)です。
ストラディバリウスで構成されたカルテットは世界に6セットしか存在せず、極めて貴重なコレクションとなっています。
その他にも、「サマズィユ」(1732年製)、「ドラゴネッティ」(1700年製)、「ハギンス」(1715年製)など、歴史的価値の高い楽器を多数所有しています。
これらの楽器は、日本の篤志家からの寄付や日本財団からの助成により購入されたものです。
財団の使命は、これらの名器を適切に管理し、世界中の優れた演奏家に貸与することで、音楽文化の発展に貢献することです。
演奏家への貸与条件と管理体制
日本音楽財団の楽器貸与事業では、世界トップクラスの演奏家に対してストラディバリウスを貸し出しています。
貸与の対象となるのは、国際コンクールの優勝者や、すでに国際的な活動実績のある演奏家です。
例えば、エリザベート王妃国際音楽コンクールのヴァイオリン部門優勝者には、副賞として次期コンクールまで「ハギンス」が貸与されます。
この仕組みにより、コンクールの発展と演奏家の技術向上の両方に寄与しています。
貸与期間は演奏家の活動状況によって異なりますが、長期間にわたる貸与も珍しくありません。
財団は楽器の管理体制にも万全を期しており、定期的なメンテナンスや保険の手配なども行っています。
演奏家は楽器の購入費用を負担することなく、世界最高峰の楽器で演奏活動ができるというメリットがあります。
一方で、貸与である以上、楽器の取り扱いには細心の注意が必要で、温度・湿度管理や破損・盗難のリスク管理も重要な責任となります。
パガニーニ・カルテットなど貴重なセット楽器
パガニーニ・カルテットは、日本音楽財団が所有する最も貴重なコレクションです。
このセットは、19世紀の伝説的なヴァイオリニストで作曲家のニコロ・パガニーニ(1782~1840)が所有していたことで有名です。
ストラディバリウスで構成されたカルテットは世界に6セットしか存在せず、そのうちの1セットが日本にあることは音楽界にとって大きな意味を持ちます。
日本音楽財団は、アメリカのアンナ・E・クラーク夫人の意志を受け継ぎ、4挺を常にセットとして四重奏団に貸与しています。
つまり、バラバラに個別の演奏家に貸与するのではなく、四重奏団として活動する4人に一括して貸与する方針です。
これにより、4挺のストラディバリウスが生み出す究極のハーモニーを、世界中の聴衆が楽しむことができます。
パガニーニ・カルテットの音色は、個々の楽器の美しさだけでなく、4挺が揃った時の一体感が特別だと言われています。
このような貴重なセット楽器を保有し、適切に活用している日本音楽財団の役割は、世界の音楽文化にとって極めて重要なのです。
日本ヴァイオリン・ブリッジの仲介活動
日本ヴァイオリンは、1980年に中澤宗幸氏によって創業された企業で、ストラディバリウスなどのオールド弦楽器の販売・修復・管理を行っています。
その売上はアジアでトップの実績を持ち、著名ヴァイオリニストたちからの信頼も厚く、彼らの銘器のメンテナンスも手がけています。
日本ヴァイオリンが展開する「日本ヴァイオリン・ブリッジ」は、音楽家とスポンサーをつなぐ仲介事業です。
世界には、アートを買ったりスポーツ選手をサポートしたりする社会貢献投資に興味を持つ人々がいます。
日本ヴァイオリンは、こうした社会貢献への意識の高い投資家にアプローチし、ストラディバリウスへの投資を提案します。
投資家がストラディバリウスを購入し、それを日本ヴァイオリンが管理しながら、才能ある演奏家に貸与する仕組みです。
前澤友作さんがストラディバリウス「ハンマー」を購入し、天才少女HIMARIさんに貸与したのも、この仲介活動の成果です。
多くの場合、楽器の所有者と使用者はイコールではありません。
日本ヴァイオリンは、ヴァイオリンだけでなく買い手まで探すことで、楽器が適切に使用され続ける環境を整えているのです。
まとめ
この記事でわかったポイントをまとめます。
- 日本には約40挺のストラディバリウスがあり、個人所有と貸与の両方で使われている
- 日本音楽財団は15挺以上のストラディバリウスを所有し、世界トップクラスの演奏家に貸与している
- 高嶋ちさ子さんは1736年製「ルーシー」を約2億円で個人所有している
- 千住真理子さんは「デュランティ」を2~3億円で購入し、個人所有している
- 前澤友作さんは「ハンマー」を約4億円で購入し、天才少女HIMARIさんに貸与している
- ストラディバリウスは全世界で約600挺しか現存しない希少な楽器である
- オークション史上最高額は2011年の「レディ・ブラント」で約15.9億円
- 高額な理由は音色の美しさ、小氷河期の木材、300年のエイジング効果による
- 日本ヴァイオリン・ブリッジは投資家と演奏家をつなぐ仲介活動を行っている
- パガニーニ・カルテットなど世界に6セットしかない貴重なセット楽器も日本にある
ストラディバリウスは単なる高価な楽器ではなく、歴史と文化を背負った芸術作品です。日本の演奏家たちが世界最高峰の楽器で素晴らしい演奏を届けてくれることを、これからも応援していきましょう!
関連サイト
- 日本音楽財団 公式サイト(https://www.nmf.or.jp/)
- ストラディバリ博物館 公式サイト(https://www.museodelviolino.org/)