あなたは「車をぶつけたかも」と後から気づいて焦った経験はありませんか?結論、当て逃げは処分なしになる可能性もあります。この記事では、事故後に気づいた場合の正しい対応方法や処分回避のポイント、法的リスクについて詳しく解説します。あなたの不安を解消するために、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
当て逃げとは?処分なしで済むケースとその理由
当て逃げの定義と法律上の位置づけ
当て逃げとは、車を運転中に他の車や物に衝突する物損事故を起こした後、法律で定められた義務を果たさずにその場から立ち去ることを指します。
法律用語ではないものの、一般的に「当て逃げ」は人の死傷がない物損事故の場合に使われ、人身事故の場合の「ひき逃げ」とは区別されています。
当て逃げは一般的に物損事故を起こした後、加害者がその場から逃げることと理解されていますが、法律的には「逃げる=立ち去る」ことが問題なのではありません。
法的に問題とされるのは、道路交通法第72条に規定されている「危険防止措置義務」と「警察への報告義務」を怠ったことにあるのです。
具体的には、事故を起こした場合に①直ちに車を停止し、②道路における危険を防止する措置を取る、③警察に報告する、という義務があり、これらを果たさずに立ち去ると当て逃げとなります。
当て逃げは駐車場や空き地など道路以外でも成立します。
道路交通法では「道路」に公道だけでなく「一般交通の用に供するその他の場所」も含まれます。これは不特定の人が自由に通行できる場所を意味するため、たとえ道路外であっても、駐車場や空き地などは「道路」として扱われます。
処分なしとなる可能性がある具体的なケース
当て逃げをした場合でも、処分なしとなる可能性があるケースがいくつか存在します。
まず、物損の程度が極めて軽微で、相手方にほとんど被害が生じていない場合です。
たとえば、駐車場で相手の車に軽く接触したが、目視できる傷がついておらず実質的な損害がない場合などは、相手方から被害届が出されないことも多く、結果的に処分を受けないことがあります。
次に、事故発生後すぐに自主的に警察に出頭し、誠意を持って対応した場合です。
適法に自首が成立した場合は、刑法第42条1項の「その刑を減軽することができる」という規定が適用されます。
事故に気づいた時点で速やかに警察に自首し、被害者への謝罪と適切な補償を行えば、検察官の判断により不起訴処分となる可能性が高まります。
また、相手方と早期に示談が成立し、被害者が処罰を望まないと表明した場合も、処分なしとなるケースがあります。
不起訴処分となる主な理由とその背景
当て逃げ事件で不起訴処分となる主な理由には、以下のようなものがあります。
一つ目は、証拠不十分です。
当て逃げ事件は目撃者がいない場合や証拠が少ない場合が多く、加害者を特定できても立証が難しいケースがあります。
二つ目は、早期の自首と反省の態度です。
事故発生後、自ら警察に出頭し真摯に反省の態度を示した場合、「悪質性が低い」と判断され不起訴となる可能性があります。
三つ目は、示談の成立です。
被害者との間で示談が成立し、被害者が「処罰を望まない」旨の嘆願書を提出した場合、検察は起訴猶予処分とすることがあります。
示談交渉に関して弁護士に依頼すると、被害者側も納得できる範囲で話をまとめてくれることが期待できます。とくに、示談書のなかで加害者を許す、もしくは刑事罰を求める気はないなどの文言が入っていれば不起訴になる公算は大きいといえます。
四つ目は、被害の軽微性です。
物損の程度が極めて軽微な場合、社会的影響を考慮して起訴しないという判断がなされることがあります。
被害が軽微な場合の対応と処分の可能性
被害が軽微な場合でも、当て逃げは犯罪行為であることを認識し、適切な対応を取ることが重要です。
軽微な接触事故であっても、まずは車を停止し、相手方への連絡や警察への報告義務を果たすべきです。
もし軽微な事故を起こしたことに後から気づいた場合は、速やかに警察署に出向いて事情を説明しましょう。
駐車場での接触事故においては、ぶつけられた側の車のドライバーがその場にいないこともあります。ぶつけた側の車が気づかずにその場を立ち去ってしまい、結果として「当て逃げ」になるケースもあります。
事後的であっても自主的に申告することで、悪質性は低いと判断され、処分が軽減される可能性が高まります。
被害が軽微であっても、警察への報告を怠ると「報告義務違反」として3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金の対象となるリスクがあります。
ただし、被害が本当に軽微で相手方も処罰を望まない場合には、検察官の判断で起訴猶予となり、結果的に処分なしとなることもあります。
処分なしとなるための条件と注意点
当て逃げの処分なしを目指すなら、以下の条件を満たすことが重要です。
一つ目は、事故発生を認識した時点で速やかに警察に自首することです。
自首とは、捜査機関が犯罪を認知し、あるいは犯人を特定するよりも前に、犯人みずからが自身の処罰を求めて犯罪を申告する手続きを指します。
自首の時点で警察がまだ事件を認知していない場合、刑法上の自首が成立し、刑が減軽される可能性があります。
二つ目は、被害者への誠実な対応と適切な補償です。
被害者に対して誠意を持って謝罪し、修理費などの損害を適切に補償することが示談交渉を円滑に進める上で重要です。
三つ目は、弁護士への相談です。
当て逃げを起こし不安に駆られている方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。逮捕前から弁護士に依頼することで、逮捕後の弁護活動にスムーズになります。
弁護士は、警察や検察との交渉、被害者との示談交渉をサポートし、不起訴処分を得るための助言を提供してくれます。
注意すべき点として、当て逃げの罪を軽減するために虚偽の申告をすることは絶対に避けるべきです。
嘘の供述は新たな罪に問われる可能性があり、かえって状況を悪化させてしまいます。
また、事故発覚後に飲酒をして「事故後に飲んだ」と主張することも、証拠隠滅と見なされるリスクがあるため避けましょう。
事故後に気づいた場合の正しい対応方法
すぐに警察に連絡すべき理由とその手順
当て逃げを起こしたことに後から気づいた場合、すぐに警察に連絡することが重要です。
その理由はいくつかあります。
まず、法的責任を最小限に抑えるためです。
当て逃げになることで、刑事責任と行政責任の余計な罰則を受ける可能性を自ら作ってしまいます。
事故に気づいた時点で自主的に警察に連絡することで、悪質性が低いと判断され、刑事罰が軽減されたり、不起訴になったりする可能性が高まります。
次に、証拠隠滅の疑いを避けるためです。
時間が経過すると「証拠を隠そうとしていた」と疑われるリスクが高まります。
早期に連絡することで、誠実な対応をしていることが伝わりやすくなります。
警察への連絡手順は以下の通りです。
- まずは冷静になり、事故の状況を思い出して整理しましょう
- 事故現場を管轄する警察署に電話し、「物損事故を起こしたことに後から気づいた」旨を伝えます
- 警察の指示に従い、指定された時間に警察署へ出向きます
- 警察署では、運転免許証や車検証などの書類を持参し、事故の状況を正直に説明します
- 警察官の質問には誠実に回答し、嘘をつかないようにしましょう
被害者への連絡と謝罪の重要性
当て逃げに気づいた後は、被害者への連絡と謝罪も重要なステップです。
被害者への誠実な謝罪は、示談交渉をスムーズに進める上で非常に大切です。
被害者の連絡先がわかる場合は、直接連絡を取って謝罪の意を伝えましょう。
連絡先がわからない場合は、警察を通じて連絡を取ることも可能です。
謝罪の際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 事故の状況と、その場を離れてしまったことに対する謝罪を率直に伝える
- 被害者の怒りや不満に対して、反論せずに謙虚に耳を傾ける
- 修理費など必要な補償をする意思があることを明確に伝える
- 保険会社の連絡先や自分の連絡先を確実に伝える
- 謝罪の言葉は具体的に伝え、「すみませんでした」と明確に謝罪する
当て逃げを起こした加害者には、民事責任として、当て逃げにより生じた物的損害について損害賠償金を支払う義務が生じます。被害者に対して支払う損害賠償金の金額は、基本的には加害者・被害者間の示談交渉で決められるでしょう。
誠意ある対応と適切な補償の提案は、被害者の怒りを和らげ、円満な解決に向けた大きな一歩となります。
事故現場の証拠保全と記録の取り方
当て逃げに気づいた後、事故現場や自車の状態を記録しておくことも重要です。
これらの証拠は、事故状況の説明や損害額の算定に役立ちます。
具体的な証拠保全の方法は以下の通りです。
- 自車の破損箇所や跡を複数の角度から写真撮影する
- 可能であれば事故現場に戻り、道路状況や接触した物の状態を撮影する
- 周辺に防犯カメラがないか確認し、映像が残っている可能性がある場合は所有者に保存を依頼する
- ドライブレコーダーを装着している場合は、データを保存しておく
- 事故の日時、場所、状況などを文書にまとめておく
ドライブレコーダーを付けているなら、当て逃げされたときの状況が記録に残っていないか、録画映像を確認しましょう。録画映像による記録は有力な証拠になりえます。
これは被害者側の対応ですが、加害者側も同様に自分の車の状態などを記録しておくことが大切です。
証拠保全は、事故の状況を客観的に説明するために役立ち、後のトラブル防止にもつながります。
保険会社への連絡と保険適用のポイント
当て逃げに気づいた後は、加入している自動車保険会社への連絡も忘れないようにしましょう。
保険会社への連絡は、事故発生を認識してからなるべく早く行うことが重要です。
多くの保険会社では「事故発生から30日以内」などの連絡期限を設けています。
保険会社への連絡時には、以下の情報を伝えましょう。
- 事故発生の日時と場所
- 事故の状況(気づいた経緯も含めて)
- 被害物の種類や状態(わかる範囲で)
- 警察への届出状況と担当警察署名
- 被害者との連絡状況(連絡が取れている場合)
当て逃げの加害者が見つからなかったり、見つかっても加害者に損害賠償能力がなかったりして、結局は車の修理代を自分で負担することになるケースもあります。そうなったとに備えて、ご自身が加入している保険会社にも、連絡を入れておきましょう。
保険適用のポイントとして、対物賠償保険が被害者の車や物の修理費をカバーし、車両保険が自分の車の修理費をカバーします。
ただし、当て逃げをした場合、保険会社が支払いを拒否したり、制限したりする場合もあるため、正直に状況を説明することが重要です。
弁護士への相談が有効なケースとそのメリット
当て逃げに気づいた場合、弁護士への相談が特に有効なケースがあります。
以下のような状況では、弁護士への相談を検討すべきでしょう。
- 高額な物損が生じている場合
- 被害者が強い怒りを示し、示談交渉が難航しそうな場合
- 逮捕や厳しい処分を受ける可能性がある場合
- 過去に交通違反や事故歴がある場合
- 事故の状況が複雑で、責任の所在が明確でない場合
弁護士に相談すれば、法律の専門家の見地からいろいろとアドバイスを受けられます。具体的には警察への申告方法などのアドバイスを受けられ、一人で心細い場合は出頭に同行してくれることもあります。
弁護士に相談するメリットとしては、以下のようなものがあります。
- 警察や検察との適切な交渉による処分軽減の可能性
- 被害者との円滑な示談交渉の進行
- 法的責任の範囲や対応方法についての専門的アドバイス
- 自首や供述の際の注意点についてのガイダンス
- 精神的な支えとしての安心感
弁護士費用は心配かもしれませんが、多くの自動車保険には「弁護士費用特約」が付帯されており、この特約を使えば費用負担を軽減できる場合があります。
また、初回相談無料の法律事務所も多くありますので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
当て逃げの法的責任と処分の種類
刑事責任:懲役や罰金の可能性
当て逃げを行った場合、刑事責任として懲役や罰金を科される可能性があります。
道路交通法では、当て逃げに関連して以下の罰則が定められています。
- 危険防止措置義務違反:1年以下の懲役または10万円以下の罰金
- 報告義務違反:3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
当て逃げの事故について起訴されれば、道路交通法の義務に違反したことについて、懲役刑や罰金刑を科されることとなるでしょう。事故発生後に逃走していることから、逃捕される可能性もあります。
これらの罰則は、事故を起こしたこと自体ではなく、その後の適切な対応を怠ったことに対するものです。
したがって、物損事故を起こしても、その場で停止して危険防止措置を取り、警察に報告すれば、通常は刑事責任を問われることはありません。
また、飲酒運転や無免許運転など、事故の原因となった違反がある場合は、それに対する刑事責任も別途追及されることになります。
刑事責任を最小限に抑えるためには、事故に気づいた時点で速やかに警察に連絡し、正直に状況を説明することが重要です。
行政処分:免許停止や違反点数の加算
当て逃げを行った場合、刑事責任とは別に行政処分も受けることになります。
行政処分として、運転免許の停止や違反点数の加算があります。
具体的な違反点数は以下の通りです。
- 安全運転義務違反:基本点数2点
- 危険防止措置義務違反:基本点数5点
違反点数は、違反の前歴がなく、3年間で累積点数が6~8点になると、原則として30日間の免許停止処分になります。つまり1回当て逃げをすると、少なくとも30日間の免許停止処分を受けることになるのです。
当て逃げだけでも合計7点の違反点数となり、前歴がなくても30日間の免許停止処分を受けることになります。
さらに、飲酒運転や無免許運転、スピード違反などの違反があった場合は、それらの点数も加算されます。
当て逃げを起こした原因が、飲酒運転や居眠り運転によるものであったというようなケースでは、さらなる点数の加算が行われ、より重い処分内容となるでしょう。
一方、物損事故であっても、適切に警察に報告し、危険防止措置を取っていれば、基本的に違反点数は加算されません。
これが、当て逃げをせずにきちんと対応することの大きなメリットです。
民事責任:損害賠償請求のリスク
当て逃げを行った場合、刑事責任や行政処分とは別に、被害者から民事上の損害賠償を請求されるリスクがあります。
民事責任の内容は、主に相手の車や物の修理費用ですが、場合によっては以下のような賠償責任も生じます。
- 物損に関する修理費
- 修理期間中の代車費用
- 修理できない場合の車両価値
- 休業損害(事業用車両の場合)
- 弁護士費用
事故で被害者のペットが死亡した場合などは慰謝料請求もあり得るでしょう(法律上、ペットは物として扱われます)。
当て逃げをすることで、示談交渉が難航し、通常よりも高額な賠償金を請求されるリスクが高まります。
危険防止措置などのきちんとした対応を取らないことで、被害者が許せないという感情が強くなり、示談交渉等でも揉める要因にもなります。
損害賠償責任は自動車保険の対物賠償保険でカバーされますが、当て逃げの場合、保険会社が支払いを拒否したり、後日求償されたりする可能性もあるため注意が必要です。
適切に対応し、誠意を持って示談交渉に臨むことが、損害賠償額を適正に抑える鍵となります。
時効の期間とその影響
当て逃げに関する罪にも時効があり、一定期間が経過すると訴追できなくなります。
刑事責任については、以下のような時効期間が設けられています。
- 報告義務違反(3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金):3年
- 危険防止措置義務違反(1年以下の懲役または10万円以下の罰金):3年
これらの時効は、犯罪行為が終了した時点から起算されます。
ただし、時効を当てにして逃げ切ろうとするのは非常にリスクが高いです。
当て逃げは防犯カメラや目撃者の証言、車の損傷状況など、様々な証拠から発覚する可能性があります。
また、時効を迎える前に発覚した場合は、「逃げ得」を狙っていたとして、より厳しい処分を受ける可能性が高まります。
民事上の損害賠償請求権については、被害者が損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効となります。
したがって、当て逃げをした場合でも、かなり長期間にわたって損害賠償請求のリスクを抱えることになります。
前科がつく可能性とその影響
当て逃げで検挙され、有罪判決を受けた場合、前科がつく可能性があります。
前科とは、有罪判決を受けたという犯罪歴のことで、以下のような影響があります。
- 就職・転職時の障害になる可能性がある
- 公務員試験など、一部の職業につけなくなる場合がある
- 入国審査やビザ申請時に不利になる可能性がある
- 社会的な信用の低下
- 再犯時に量刑が重くなる可能性がある
前科は基本的に一生消えることはありませんが、一定期間経過すると「前科の影響が実質的になくなる」とされています。
その期間は犯罪の軽重によって異なりますが、当て逃げのような比較的軽微な犯罪の場合、5年から10年程度と考えられています。
前科をつけないためには、まず当て逃げをしないことが最も重要ですが、もし当て逃げをしてしまった場合は、早期に自首して示談を成立させることで、不起訴処分となる可能性を高めることが大切です。
不起訴処分となれば、前科はつきません。
示談交渉と処分回避のためのポイント
示談の重要性とその進め方
当て逃げ事案では、被害者との示談成立が処分回避の大きな鍵となります。
示談とは、当事者間の話し合いにより、損害賠償などの民事上の紛争を解決する合意のことです。
示談が重要な理由は、以下の通りです。
- 被害者が「処罰を望まない」旨の嘆願書を提出してくれれば、不起訴になる可能性が高まる
- 早期解決により、被害者の怒りや不満を和らげることができる
- 民事訴訟に発展するリスクを回避できる
- 保険会社の対応もスムーズになる
示談交渉の進め方としては、以下のステップが一般的です。
- まずは誠意を持って謝罪する
- 被害状況を確認し、修理費など必要な補償内容を明確にする
- 保険会社と連携して、適切な賠償額を提示する
- 合意に達したら、示談書を作成する
- 示談金を支払い、示談書を交換する
弁護士に依頼すると代理人として被害者と示談交渉し、仮に示談が成立すると起訴されずに済む可能性が高まります。交通事故に注力している弁護士に依頼をすれば示談交渉に関するノウハウを豊富に持っています。
示談交渉は感情的にならず、冷静に進めることが重要です。
特に当て逃げ事案では、被害者の怒りや不信感が強いケースが多いため、誠意ある対応と適切な補償の提案が鍵となります。
示談金の相場と支払い方法
当て逃げにおける示談金の相場は、物損の程度や事案の内容によって大きく異なります。
一般的な物損事故の示談金は以下のような項目から構成されます。
- 物的損害の修理費用(実費)
- 修理期間中の代車費用(実費)
- 修理不能の場合は車両価値相当額
- 事業用車両の場合の営業損害
- 弁護士費用(実費の範囲内)
通常の物損事故では、刑事責任と行政責任を問われることはありません。民事責任を果たすだけでトラブルを解決できます。
小規模な当て逃げの場合、修理費のみで示談が成立するケースも多いですが、被害者の感情的な部分も大きく影響するため、誠意ある対応が重要です。
示談金の支払い方法としては、以下のような選択肢があります。
- 一括払い:最も一般的で、示談成立と同時に全額を支払う方法
- 分割払い:一度に支払うことが困難な場合、分割での支払いに合意するケース
- 保険会社を通じた支払い:対物賠償保険を使って保険会社から支払われるケース
保険会社を通じた支払いが最も一般的ですが、当て逃げの場合は保険会社が支払いを拒否したり、後日求償されたりする可能性もあるため注意が必要です。
示談交渉では、被害者の要求をただ受け入れるのではなく、適正な賠償額について冷静に話し合うことが大切です。
示談成立が処分に与える影響
示談の成立は、当て逃げによる処分に大きな影響を与えます。
示談成立が処分に与える主な影響は、以下の通りです。
- 不起訴処分の可能性が高まる 検察官は「起訴猶予」の判断を行う際、示談の成否を重要な要素として考慮します。示談が成立し、被害者が「処罰を望まない」という意思を示していれば、不起訴になる可能性が高まります。
- 起訴された場合でも量刑が軽減される 裁判になった場合でも、示談が成立していれば情状酌量の余地が生まれ、刑が軽減される可能性があります。
- 民事訴訟のリスクがなくなる 示談が成立すれば、被害者から損害賠償請求の民事訴訟を起こされるリスクがなくなります。
とくに、示談書のなかで加害者を許す、もしくは刑事罰を求める気はないなどの文言が入っていれば不起訴になる公算は大きいといえます。
当て逃げ事件では、被害者の心情や意向が処分に大きく影響するため、誠意を持って対応し、納得のいく示談を成立させることが重要です。
示談が不成立でも、真摯に謝罪して賠償の努力をしている姿勢は検察官や裁判官にアピールできる場合があります。
弁護士を通じた示談交渉のメリット
当て逃げ事案での示談交渉は、弁護士に依頼することで多くのメリットがあります。
弁護士を通じた示談交渉の主なメリットは以下の通りです。
- 専門的な交渉スキル 弁護士は交渉のプロであり、感情的になりがちな示談交渉を冷静に進めることができます。
- 適正な賠償額の提示 弁護士は類似事例の賠償額を把握しており、過剰な要求から依頼者を守ることができます。
- 示談書の適切な作成 法的に有効な示談書を作成し、後日のトラブルを防止します。特に「刑事処分を望まない」旨の記載は重要です。
- 警察・検察とのパイプ 弁護士は警察や検察とのコミュニケーション経験が豊富で、処分軽減に向けた適切な働きかけが可能です。
- 心理的な負担軽減 当て逃げの加害者は精神的に追い詰められがちですが、弁護士に相談することで心理的な支えになります。
加害者本人が直接交渉すると、被害者の感情的な反応に適切に対応できなかったり、法的な知識不足から不利な条件で示談に応じてしまったりするリスクがあります。
弁護士に依頼する場合の費用は心配かもしれませんが、自動車保険の「弁護士費用特約」が使える場合があります。
また、多くの法律事務所では初回相談無料のサービスを提供しているので、まずは相談してみることをおすすめします。
示談が不成立の場合の対応策
示談交渉が上手くいかず、不成立となってしまった場合でも、適切な対応策があります。
示談不成立時の主な対応策は以下の通りです。
- 弁護士に相談する まだ弁護士に依頼していない場合は、専門家のサポートを受けることを検討しましょう。弁護士が間に入ることで、こじれた交渉が進展する可能性があります。
- 調停の申し立て 裁判所の調停制度を利用する方法もあります。裁判官と調停委員が仲介役となり、話し合いによる解決を目指します。
- 誠意ある対応を継続する 被害者の要求に全て応じることは難しくても、可能な範囲で誠意ある対応を継続しましょう。修理費などの実費分だけでも先に支払うなどの方法もあります。
- 検察・裁判所への対応を準備する 示談が不成立でも、反省の態度や賠償の努力をしていることを示す資料を準備し、検察官や裁判官に伝えることが重要です。
- 民事裁判への準備 損害賠償請求の民事裁判に発展する可能性も考慮し、証拠や主張の準備をしておきましょう。
示談が不成立でも、誠実な対応と反省の態度を示し続けることが、刑事処分の軽減につながる可能性があります。
また、時間の経過とともに被害者の気持ちが変わることもあるため、根気強く対応することも大切です。
当て逃げを防ぐための予防策と心構え
ドライブレコーダーの活用と設置のポイント
当て逃げの被害に遭った場合の証拠確保や、自分自身が加害者になることを防ぐためにも、ドライブレコーダーの設置は非常に有効です。
ドライブレコーダーの活用ポイントは以下の通りです。
- 前後両方の録画 前方だけでなく後方も録画できる2カメラタイプを選ぶことで、駐車中の当て逃げも記録できます。
- 駐車監視機能付きの機種を選ぶ エンジンを切った状態でも、衝撃を検知して自動録画する機能があると安心です。
- 高画質・広角レンズの機種を選ぶ ナンバープレートの識別ができる画質と、広い範囲を録画できる広角レンズは重要です。
- SDカードの容量と耐久性に注意 長時間の録画に対応できる大容量で耐久性の高いSDカードを使用しましょう。
- 適切な位置に設置する 視界を妨げず、広い範囲を録画できる位置に設置することが大切です。
ドライブレコーダーの映像は、当て逃げの被害者になった場合の証拠として非常に有効です。映像があれば加害者の特定が容易になり、損害賠償請求もスムーズに進みます。
また、自分が加害者の立場になった場合も、事故の状況を客観的に記録することで、過失割合の適正な判断や不当な請求から身を守ることができます。
ドライブレコーダーは「事故抑止」の効果もあり、運転者が録画を意識することで安全運転への意識が高まります。
事故発生時の冷静な対応方法
交通事故が発生した時、冷静に対応することが当て逃げを防ぐ鍵となります。
事故発生時の適切な対応手順は以下の通りです。
- まず安全な場所に車を停車する 二次事故を防ぐため、可能であれば路肩など安全な場所に車を移動させましょう。
- ハザードランプを点灯させ、三角停止表示板を設置する 後続車に事故を知らせ、追突を防止します。
- 負傷者の有無を確認し、必要であれば救護する 負傷者がいる場合は119番に連絡し、応急処置を行います。
- 警察に連絡する(110番) 物損事故であっても、必ず警察に連絡して指示を仰ぎましょう。
- 相手方と必要な情報を交換する 名前、連絡先、車の登録番号、保険会社名などの情報を交換します。
- 現場の状況を記録する スマートフォンなどで事故現場や車両の損傷状況を撮影しておきましょう。
パニックに陥りやすい事故直後こそ、深呼吸をして冷静さを保つことが重要です。何より「逃げない」という意識を持つことが大切です。
どれだけ混乱してもその場から逃げてはいけません。車などにぶつかって、そのまま逃走することを当て逃げといい、起こしてしまった場合は刑事、行政、民事とさまざまな面で責任を問われます。
事故を起こしてしまった場合の正しい対応を知っておくことで、パニック状態でも適切な行動がとれるようになります。
事故後のチェックリストと対応手順
事故後に適切に対応するためのチェックリストを紹介します。
これを知っておくことで、当て逃げを防ぎ、法的問題を最小限に抑えることができます。
【事故発生直後のチェックリスト】
- □ 安全な場所に車を停止した
- □ ハザードランプを点灯させた
- □ 負傷者の有無を確認した
- □ 警察に連絡した(110番)
- □ 相手方と情報交換をした
- □ 現場の写真を撮影した
【事故当日中の対応チェックリスト】
- □ 保険会社に連絡した
- □ 車両の損傷状態を詳細に記録した
- □ 目撃者がいれば連絡先を確認した
- □ 現場検証に立ち会った
- □ 交通事故証明書の発行手続きをした
【事故後数日以内の対応チェックリスト】
- □ 修理工場に見積もりを依頼した
- □ 保険会社の担当者と打ち合わせをした
- □ 必要に応じて弁護士に相談した
- □ 示談交渉の準備を進めた
- □ 自分の体調変化に注意した
これらのチェックリストを事前に知っておくことで、事故発生時のパニックを抑え、冷静に対応できるようになります。
特に「警察への連絡」は、物損事故であっても必ず行うべき重要なステップです。報告を怠ると当て逃げとなり、思わぬ重い処分を受けることになります。
運転中の注意点と安全運転の心構え
当て逃げを防ぐためには、そもそも事故を起こさないための安全運転が基本です。
安全運転のための注意点と心構えを紹介します。
- 十分な車間距離を保つ 前方車両との車間距離は、時速の数値の半分のメートル数(例:時速60kmなら30m)を目安にしましょう。
- スピードを控えめにする 制限速度を守ることはもちろん、道路状況や天候に応じて更に速度を落とす判断が大切です。
- 脇見運転をしない スマートフォンの操作やカーナビの注視など、わずかな脇見が大事故につながります。
- 駐車時の周囲確認を徹底する 特に駐車場では、接触事故が多発しています。バックする際は必ず目視確認をしましょう。
- 疲労時や飲酒後の運転を避ける 体調不良や眠気を感じる時は運転を控え、飲酒運転は絶対に行わないようにしましょう。
- 定期的な車両点検を行う ブレーキやタイヤの状態を定期的に確認し、不具合による事故を防止しましょう。
- 「急」のつく運転を避ける 急発進、急ブレーキ、急ハンドルは事故のリスクを高めます。余裕を持った運転を心がけましょう。
安全運転の基本は「思いやり」です。自分だけでなく、他の道路利用者への配慮を忘れないようにしましょう。
また、「事故を起こしたらきちんと対応する」という心構えも重要です。当て逃げは犯罪行為であり、発覚した場合のリスクは逃げなかった場合よりもはるかに大きいことを認識しておきましょう。
万が一のための保険の見直しと準備
万が一の事故に備えて、自動車保険の内容を定期的に見直すことも重要です。
適切な保険に加入しておくことで、当て逃げをしなければならないような状況(賠償能力がないなど)を防ぐことができます。
自動車保険見直しのポイントは以下の通りです。
- 対物賠償保険の限度額確認 高額な物を破損させた場合に備え、無制限プランの検討が望ましいです。
- 車両保険の加入検討 自分の車の修理費用をカバーする車両保険は、当て逃げの被害に遭った場合にも役立ちます。
- 弁護士費用特約の追加 示談交渉や刑事事件対応時の弁護士費用をカバーする特約は非常に重要です。
- 対物超過修理費用特約の検討 時価額を超える修理費用が発生した場合に備える特約です。
- 個人賠償責任保険との重複確認 火災保険などに付帯している個人賠償責任保険との重複がないか確認しましょう。
- ドライバー保険の検討(自家用車を持たない人) 自分の車を持たない人でも、友人の車を運転する機会がある場合は検討すべきです。
保険証券は車内に保管し、事故発生時にすぐに確認できるようにしておきましょう。
また、保険会社の連絡先や事故対応窓口の電話番号をスマートフォンに登録しておくと安心です。
保険会社によっては事故対応サービスが24時間対応していない場合もあるため、事前に確認しておくことも大切です。
適切な保険に加入しておくことで、万が一事故を起こしても経済的な不安から当て逃げを選択するというリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
当て逃げと処分に関する重要なポイントをまとめると、以下のようになります。
- 当て逃げとは物損事故を起こした後、法律で定められた危険防止措置や警察への報告を怠り立ち去る行為です。
- 処分なしになる可能性があるのは、事故発生後すぐに自主的に警察に出頭した場合や被害が極めて軽微な場合などです。
- 事故に気づいた時点ですぐに警察に連絡し、被害者への誠実な謝罪と適切な補償を行うことが重要です。
- 当て逃げの刑事罰は、危険防止措置義務違反で1年以下の懲役または10万円以下の罰金、報告義務違反で3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
- 行政処分としては合計7点の違反点数が加算され、30日間の免許停止処分となります。
- 被害者との示談成立は処分軽減のための重要な要素であり、弁護士の助けを借りることが効果的です。
- 示談が不成立でも、誠意ある対応と賠償の努力を続けることが大切です。
- ドライブレコーダーの設置や安全運転の心がけなど、事前の予防策も重要です。
- 適切な自動車保険に加入しておくことで、万が一の時のリスクを大きく減らせます。
- 物損事故であっても、必ず警察に報告することで当て逃げを防げることを忘れないでください。
当て逃げは犯罪であり、発覚した場合のリスクは非常に大きいものです。しかし、事故後に冷静に対応し、法律で定められた義務を果たすことで、多くの問題を回避することができます。もし不安な点があれば、弁護士や保険会社に相談し、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。安全運転を心がけ、万が一の際には正しい対応を取れるよう、この記事の知識をぜひお役立てください。
関連サイト
- 警察庁交通局「交通事故発生時の対応」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/index.html
- 法務省「民事・刑事手続きについて」 https://www.moj.go.jp/housei/index.html